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#07 日々是口実 「空白を満たさない」

人は空白を満たしたくなる。

そんな気がしてならない。

例えば、僕らのスタジオでもあるコンコンは、仕事がらみのアイテムや書籍、酒、酒器、おもちゃなどなどもので溢れかえっている。倉庫でもあり工房でもあるので致し方ない。

逆に僕のアトリエにはものが何もない。まだ12月に開いたばかりだからというのもある。机に椅子に仮眠ベッドのみ。増えたとしても仕事関連の参考書籍が積まれるくらいだろう。

ほとんど所有しない

僕自身も物をほとんど所有していない。最小限でいくとタブレッドとスマホだけで出社したり出張にいったりする。荷物は?とよく聞かれるほど身軽だ。持ち家もないし、車もない。家は賃貸だし、車はカーシェア。あ、自転車だけはある。仲間たちはよく知ってるけど鍵をかけない。この前パクられたが親友研究者が見つけ出してくれた。最悪、悪意によって盗難されたとしても致し方ないと思っている。

空腹こそ最高のスパイス

モノへの執着というものが30歳あたりから消え去った。

20代はね、あれもこれもほしいと駄々をこねる子どものようだったが、きっかけは何かわからない。瀬戸内国際芸術祭にお声がけいただき小豆島滞在したときかもしれない。もの以上に豊かな環境や自然や人と触れ合う中で、もう僕の空白は満たされていると感じた。

「空腹こそ最高のスパイス」

なんていう言葉もある。

「足るを知る」

なんてのもある。

頑張って働き倒して飲むビールは世界最大の発明だと思うし、腹ペコでかき込むご飯は生きてて最高の笑顔に繋がる。

幸せってなんでしょうね?

一定の年収を超えると人の幸福度は上がらないという研究結果もある。

日々を幸せに過ごすためには、満たしていくことではなく、満たさないことの方が最短距離ではないかなと思う。

世の中のそのような傾向にあるように思う。

今の経済成長が様々なものの犠牲に走り続けている実態だったり、豊かに暮らしてきた反面、隠されていた環境負荷が露呈している。

ジブリの名作「ハウルの動く城」では、ガチャガチャのガラクタで動く巨大な城がでてくる。クライマックスでは魔法が溶けて、トタンと足だけの存在となり役目を終え、愛すべき登場人物だけが残る。

今までのものに溢れる豊かな生活から、自身の心を知るにつて、魔法が解けて、本当に大切なものだけが残るように見えてならない。宮崎監督がどこまで考えているかはさておき、僕は勝手にそのことを考えていた。

100人、1000人の友達より、心から会話できる数名の親友の方が大切なのは僕もあなたも理解していると思う。暮らしの中で仕事の中で心の中でどこか空白の自分というものを持っていることで本当に必要なものが見えてくるのではないかと思う。